ここでは、現在進行中の研究課題についてご紹介します

<イギリス近代文学における植物表象の史的発展―資源と欲望をめぐって 科学研究助成事業 基盤研究B 平成26年度~平成29年度>
この研究は、17 世紀後半から19 世紀初頭にかけての近代のイギリス文学における植物の表象が、資源や権益をめぐる社会の権力構造やその構造から生まれる個人の欲望と連動して形成されていること、そして文学における自然表現が、資源としての草花・森などの緑の価値と相補関係にある文化・社会的構築物であることであることを明らかにすることを目的としている。
本研究の理論上の主眼は、近代以降自然(nature)として考察され、そしてエコロジーや環境といった概念で再解釈され続ける、特定の文化、社会条件下における「普遍的」概念を、具象的なモノとしての植物の存在との関係性において解体するところにある。ロマン主義の詩論がその「自然」と詩人たちを代表とする「人間」との間の共生を目指すのだとすれば、そこで前提とされている「普遍」に対しては、現実の植物とその生育実態、木々や資材と経済、消費財とそのリアリティ等々による相対化が必要なのである。神学的関心と自然科学の関心が相互に影響しあうイギリスの哲学伝統において、想像力は心とモノの間を取り持つ力として、そして人間の中の自然を回復する媒介として肯定的な位置を与えられてきた。そのことがたとえばエコクリティシズムの是認を受けたとしても、そしてロマン派的自然の現代への遺産として受け入れられたとしても、それは現在性に立脚した精神主義であり、文学上の表象は決して想像力そのものではない。水仙(daffodils)の表象は、ワーズワスが目撃した湖のほとりの岩の多い斜面の眺めだけにあったわけではないのである。想像力を語るナラティブそのものも、そのナラティブを生み出した社会的コンテキストから考察されなければならないが、本研究では、従来そうした認識論的な枠組みからの理解が多かった自然の表象を、物質的文化の多層なコンテキストにおいて読みとる方法論を追求する。

「カーペット花壇」といわれる、花を植えて絵を描くように地面を飾る植栽方法は、19世紀自然風の庭の登場後も、公共空間ではしばしば実践された。鮮やかな色合いの園芸品種が揃ったこともあって、現在でもこのように美しく庭を飾っている。Cardiff, Alexandra Gardens, Cardiff University, 2015

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